いちご味

 

季節を問わず空気の匂いを吸い込むと高校生の頃を思い出す

部活からの帰り道 友達との登校 体育の長距離走

卒業が現実味を帯び始めた頃のこと 黒タイツの暖かさ

これが、冬の匂いの記憶

誰にでも勝てるような気がしていたし

何にでもなれるような気がしていた

自動販売機でホットの紙パックを買って満足できたし

ストーブを囲んで会話をするのが好きだった

マフラーの巻き方とネクタイの巻き方は何種類も知ってたし

英語と古典の音読みにとびきり緊張した

ばれないように二人乗りをするスリルとか

校則破りのスカートの長さとか 爪の色とか

テスト週間のファーストフードとか 全部

 

私はこれからもずっと高校生の頃を思い出して

戻りたいと思い続けるのかな

みんなはちゃんと進んでいるのに

あんなに甘い毎日の中でも

憂鬱を作っていたあの頃の自分が羨ましい