賞味期限

 

長続きをした試しがない

うだるような暑さも

心地よいクーラーの事も

何ヶ月後には忘れて

また一年後に新鮮な気持ちで夏を迎える

ガムに賞味期限が無いことを知らずに

一生懸命表記を探すおばさんのことも

この一曲があれば無敵だって

本気で思ったことも

戦ってもいないのに負けた

気持ちを味わうことも

変わらない何かに

安心し続けていたことも

変わっていくものが

キラキラして見えたことも

いつもの夜ご飯も会話も治らない癖も

部活の後のシーブリーズのにおいも

毎日乗ってた電車の時間も

好きな本の好きな言葉も

全部忘れちゃって

明日の自分が

また違うものを大事にしてることが恐い

全部忘れたくないし

全部を大事にしたいのに

私を救ってくれたものを

私が救うことができない事実が悲しい

あの曲を初めて聴いた時の

衝撃をずっと味わっていたい