少しおかしい

好きを続けるのは難しくて時々嫌になる
いっそのこと嫌いになれれば
知らないままでいれたらよかったけど
こんなに好きになれるものを
知らないまま生活してたかもって
想像するのはもっと怖い
8月になる度に
谷川俊太郎さんのネロを読む
初めて読んだ時は
私も十八回の夏しか知らなかったのに
もう二十一回の夏を知っているし
この夏で二十二にもなる
だからといって何も変わらないけど、
蝉の声にもうだるような暑さにも
かき氷を食べた後頭が痛くなることにも
陽炎にもあまり驚かなくなった
これらは悲しいことなのかもしれない
色んなものにも人にも
大きな期待をしてしまうのに
人からの小さな期待には
すぐに耐えられなくなってしまう
何でも塗り潰せると思っていた絵の具が
クレヨンに弾かれたところを見た時
すれ違う人にも生活があると知った時
そんなことで世界は変わって見えたし
新しいワンピースに腕を通しただけで
こんなにも気持ちを強く持てるのに
それくらいのことで充分なのに
好きな人が知らないところで
これからどんどん歳をとっていく
好きなものが知らないところで
これからどんどん愛されていく
そんなことにまでいちいち
嫉妬する暇があるなら動けという感じ